クラフテッドWorldへようこそ

HP上で私が書いて行く内容は、年代別に順を追ってお話をするわけではないので、判りづらいところも多々あると思います。少しでも全体の流れをご理解しやすいように、当時の最上級コンポ「シュパーブ」に焦点をあて、時代を区分してみました。これより以前の70年代前期さらにそれ以前の時代については、私もまだ入社しておらず、話の種になるような話題も自分自身ほとんどありません。このへんをご理解頂いて、このコーナーを読んでいただければ、幸いです。


サンツアーストーリー

 

第11話 『小崎 信夫 氏を偲ぶ』

昨年の10月に元サンツアーの開発部長で、あの変速機の「スラントパンタグラフ機構」を発明した小崎 信夫氏が亡くなられた。

自分がサンツアー 前田工業に入社以来、ずっと帰郷、退職するまで教えを頂いた、私にとっての自転車の師である。棺の中で、花に囲まれた故人に私は震えるような涙声で「ありがとうございました・・・」としか、言えなかった。もっとたくさんお話をしたかった、残念である・・・

 

自転車には過去から現代に至るまでに数多くの淘汰を経て生き残ってきた、ほとんど普遍のもの・・・いわゆる「スタンダード」と呼ばれる物がいくつかある。たとえば、フレームのダイヤモンド構造、ドロップハンドル、カンパニョロが発明した「ハブ用クイックレリーズ」、LOOKが先鞭をつけた「ビンデイングペダル」、それにサンツアーの「スラントパンタグラフ変速機」。現在のカンパニョロ社もシマノ社も揃って採用しているこの「スラントパンタグラフ」はこれ以上淘汰の余地が無いほど完成された考え方、構造となっている。

このコーナーでもおなじみの「外装変速機の全て」の著者も師によるものだ。

師はいつも、設計する部品の構造や機能、デザインに「そうである意味」を問うた。「その商品が本当にユーザーのためになるのか?」「その商品の考え方に筋は通るのか?、正当性はあるのか?」・・・

昨年、注目されたNHKの「天地人」の上杉謙信、景勝や直江兼続がよく口にした「義」という物。

そのような「義」を自転車部品に求めた真っ直ぐで頑固なエンジニアであった。

 

昨今、裾野が拡がって来たスポーツタイプの自転車であるが、メーカーの「売らんかな」の見てくれ重視の物造りを師は天国でどう思っているのだろうか?

大阪、天王寺の新世界の串カツ屋でコップ酒・・・横で串カツ左手にタダのキャベツをかじっている私に「おい!細川! 自転車ってのはな〜」 あの優しそうな目で、小崎さん!私にもう一度説教して下さい!

 

自転車一筋の人生に乾杯!  御冥福をお祈りいたします。






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