サンツアーストーリー
第4話 「シュパーブ プロ ブレーキレバーの変遷とエアロブーム」
80年代初、中期は新製品開発競争が最も熾烈だった頃で、シマノもサンツアーもモデルチェンジ、マイナーチェンジが頻繁に行われていました。
最初にまず動いたのはシマノでした。「デユラエース AX」と称したエアロダイナミクスをうたい文句にしたシリーズでした。(この話は別の回にて書きます)
このシリーズは結局失敗に終わりましたが、唯一大事な遺産を残しました。それはブレーキワイヤー処理のエアロ化です。それまでブレーキのワイヤーはブレーキレバーブラケットの上から、飛び出した形となっており、前から見るとラクダのこぶのようでした。(通称“アウタードタイプ”と呼びます) <写真1、2>
それをハンドルバーに沿わせて、バーテープで一緒にまき込んで固定する“エアロタイプ”は多くの支持を得て、現在に至るまでスタンダードタイプとして定着しました。
<写真4> これは私が個人的に、製造部門にお願いしてレバーの肉抜き穴加工の前のものを途中行程から取り出して、穴無しにしたものです。(もちろん市場にはでてません)
“アウタードタイプ”からエアロタイプへの移行はシマノが先鞭をつけサンツアーがワンテンポ遅れて発表することになりますが、それ直前の“アウタードタイプ”は両者とも、いやカンパを含めて3者とも酷似しています。早い話がシマノもサンツアーもカンパのコピーに近かったと言った方が早いかもしれません。両者ともまだ、カンパのデザインイメージから逃れられないでいた時期です。 <写真1、2、3>
当時、サンツアーとシマノの両方が酷似していることが問題になります。レバー部分の穴明きのデザインに注目していただくと、(写真1,2) 両者とも肉抜きの長穴が2列平行にならんでいます。全くそっくりです。サンツアーも吉貝(ダイアコンペ)の製品も同じデザインのものが多々ありました。実はこのデザインがシマノのデザインパテント(物の形、形状に関する特許)に抵触してしまったのです。一般の方から見るとなんの変哲も無い単純なデザインですが、逆に単純であるがゆえに逃れようの無いデザインでした。この後、急いでサンツアー、吉貝の両者は長穴を1列にしたものに暫定的に変更します。
ところが、上でも述べたようにレバーのエアロ化とタイミングが一致してしまい、シマノの「エアロダイナミクス」路線への対応もあり、これから先「部品に空気抵抗や空気の流れを乱すような余計なでこぼこや肉抜きの穴はまずい」というイメージが巾をきかせてきます。この後、レバーのデザインは穴の開いていないシンプルなものになります。(写真5)この「エアロダイナミクス」路線はそれから全てのコンポーネントパーツに取り入れられ、サンツアーとシマノの“真っ向勝負”が始まります。
その話はまた次回にて。